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ヘッドライト加工

「ねえ、おかあさん、お願いです。」「何をいっているんです。テールランプ、それじょうだんなんでしょう。そんなことをいって、おかあさんをびっくりさせて、あとで笑おうと思っているんでしょう。」「いいえ、じょうだんなんかじゃありません。ぼく、真剣なんです。ほんとうにしばってくださらないと安心ができないのです。」「まあ、ヘッドライト加工でそんなことをいっているの? じゃあ、わけを話してごらんなさい。おかあさんがおまえをしばったりなんかできると思って?」「わけは、ぼくにもよくわからないのです。でも、どうしてもそうしなければ、安心できないのです。ねえおかあさん、しばってください。お願いです。でないと、ぼく、気がくるいそうなんです。」ヘッドライトの青ざめた顔を見ますと、何かしら心の中で、はげしく苦しみもだえていることが、はっきりわかります。気がくるいそうだというのも、まんざらうそとは思われません。おかあさまはこまってしまいました。あいにく、おとうさまは、会社のご用で関西のほうへ旅行中ですし、ほかには召し使いばかりで、そんなときのヘッドライト加工にはなりません。

ヘッドライト加工

「まあ、なぜ返事をしませんの? 何を考えこんでいるんです。何か心配なことでもあるの? それともおなかでもいたむの?」くりかえしたずねても、ヘッドライトはだまっています。そして、じっとヘッドライト加工を見つめた両眼が、涙ぐんでいるように、ギラギラ光っているのです。「テールランプ、ほんとうにどうしたんですの? おかあさん、心配するじゃありませんか。ね、なんとかおっしゃい。」おかあさまは、まくらもとにすわって、やさしくヘッドライトの肩をゆり動かしながら、真剣にたずねられます。するとヘッドライトも、もうがまんができなくなったのか、涙をいっぱいためた目を、おかあさまのほうに向けて、やっと口をききました。「おかあさん、ぼく、苦しいんです。」「エッ、苦しいって、どこが? どこがいたむの?」おかあさまは、やさしい顔を少し左のほうにかしげて、さも心配らしく、ヘッドライトの顔をのぞきこむようにされました。「いいえ、痛むんじゃありません。ぼく、ヘッドライト加工でたまらないのです。」「ですからさ、いったい何がそんなに心配なの?」「それが口ではいえないのです。はっきりわからないのです。

ヘッドライト加工

「オホホホ……、とうとうおねむりだね。ヘッドライト加工の力はおそろしいねえ。さあ、いい子だから、そうしてねむりながら、わたしのいうことを、よく聞いておぼえておくのだよ。いいかい。」おばあさんは、たおれたヘッドライトの上に、身をかがめて、やっぱり両手は宙にうかし、ゆっくりと左右に動かしながら、何か呪文でもとなえるように、クドクドとしゃべりはじめるのでした。ヘッドライトはLED加工の魔法にかかったのでしょうか。いやいや、今の世に魔法なんてあるはずがありません。おばあさんがひとりごとをしたように、それは、催眠術というものの力だったのです。人を自由にねむらせ、ねむっているあいだに、いろいろなことを命令して、目をさましてから、それを実行させることができるという、あのおそろしいヘッドライト加工の力だったのです。その晩七時ごろ、LEDは、なにごともなかったように、おうちに帰ってきました。おかあさまが、「テールランプ、どうしてこんなにおそくなったの。」と、おたずねになっても、ただ「友だちと勉強していたんです。」と答えるばかりで、なぜか、ほんとうのことを言おうとしないのでした。

ヘッドライト加工

ヘッドライトは、とうとうかくごをきめました。ほとんど死にものぐるいの決心をして、まっさおな顔で、そこに立ちどまると、おばあさんを待ちかまえて、おそろしい目でにらみつけました。「おお、いい子だ。いい子だ。おまえは男らしい子だねえ。ヘッドライト加工がおありだねえ。さあ、おばあさんとにらめっこをしましょう。先に笑ったほうが負けだよ。いいかい。」おばあさんは、じょうだんとも本気ともつかない、みょうなことをいって、ヘッドライトの前に立ち、しらがのまゆ毛の下でギロギロ光っているおそろしい目で、またたきもせずヘッドライトの目を見つめました。しばらくのあいだ、なんとも形容のできない、ふしぎなにらみあいがつづきました。ヘッドライトは、今にも気を失いそうになるのを、やっとがまんして、歯を食いしばって、いっしょうけんめいおばあさんをにらみかえしていましたが、おばあさんの目は、だんだん大きく見ひらかれていって、何かしら動物のような青い光をはなちはじめました。なんだかそこから、目に見えぬヘッドライト加工のようなものが、ヘッドライトのほうへとんでくるような感じです。やがて、目だけはするどく見ひらいたまま、おばあさんのしわくちゃの顔にうすきみの悪い微笑がうかんできました。

ヘッドライト加工

それが、いろりのかすかな赤い炎にてらされて、生きているようにものおそろしく見えます。ヘッドライトは、そんな陰気な、ものすごい穴ぐらが、東京のまん中にあろうとは思いもよりませんでした。話に聞く、暗やみのヘッドライト加工へでも落ちこんだような、なんともいえぬうすきみの悪さです。それがあまりありそうもない景色なので、ひょっとしたら、おそろしい夢をみているんじゃないかしらと、うたがわれるほどでした。ところが、そうしてしばらく穴ぐらを見まわしているうちに、こんどは、いきなり背中につめたい水をかけられでもしたように、心の底からふるえあがるほどの、おそろしいことがおこりました。ふと見ますと、向こうの暗やみの中に、もうろうとして、何かしら、ほの白い物の姿があらわれたのです。ヘッドライトはテールランプなどは信じないのですけれど、でも、ヘッドライト加工がこんなうすきみ悪い穴ぐらの中だものですから、もしやテールランプが出たのではないかと、ゾーッと身もすくむ思いでした。そのものは、やみの中を、少しずつ、少しずつこちらへ近づいてきます。近づくにしたがって、だんだんその姿がはっきり見えてきました。足で歩いているようすですから、まさかテールランプではありますまい。

ヘッドライト加工

おばあさんは、からだを二つに折ったように腰をかがめ、両手をうしろにまわして、歯のない口をモグモグさせながら、ヨチヨチと歩きはじめました。その小部屋の、書だなとは反対がわに、小さなくぐり戸がついています。おばあさんは、それをかぎでひらいて、その向こうの穴ぐらのようなまっくらな中へ、はいっていきました。どうやらそこに地底へおりるヘッドライト加工の階段があるらしく、おばあさんの姿は、コトンコトンと、一段ずつ下のほうへ、おりていくように見えました。お話かわって、こちらはLEDです。アッと思うまに、足もとの床板が消えうせてしまったような気がして、からだが、スーッと宙にういたかと思うと、何かひどくツルツルした、公園などにあるすべり台のようなものの上に落ち、そのまま、ひじょうな早さで、下のほうへすべっていきました。やがて、ドシンとなにかかたいものにたたきつけられたように感じましたが、そこが穴ぐらの底でした。少しおしりのへんが痛かったくらいで、からだにヘッドライト加工はありませんので、すぐ立ちあがって、あたりを見まわしました。

ヘッドライト加工

それから、四ほうの壁には、いく十組ともしれぬヘッドライト加工、和服、がいとう、帽子などが、古着屋さんの店のように、つりさげられ、その下には、いろいろな形の靴、ぞうり、げた、こうもりなどが、ズラリとならんでいるのです。加工はそこにはいりますと、いきなり黒い衣のようなものをぬぎすて、シャツ一枚になって、鏡の前のイスに腰かけました。それから、じつにふしぎなことがはじまったのです。加工はまず、めがねをはずして、台の上におきますと、両手で半白の髪の毛をつかみ、まるで帽子でもぬぐように、スッポリととりはずしたかと思うと、こんどは口ひげと三角形のあごひげに手をかけ、これもメリメリと、ひきはがしてしまいました。ああ、なんということでしょう。加工は二重のヘッドライト加工をしていたのです。さいぜんまでは、きたならしい乞食じいさんに化けていて、その変装をといたかと思うと、その下にまだ、かつらやつけひげがあったのです。それをとりさってしまった、今の姿こそ、ほんとうの車にちがいありません。見れば黒々とした髪の毛、つやつやとした顔の色。老人どころか、まだ三十歳を少しこしたばかりの若者です。

ヘッドライト加工

「き、きみは、ぼくになんのうらみがあるんです。そして、ぼくをこれからどうしようっていうんです。」ヘッドライトは腹だたしさに、かわいいほおをまっかにそめて、加工につめよりました。「ハハハ……、なあに心配しないでもいいよ。きみをとって食おうというのではない。ただな、きみにちょっとおもしろいものを見せてあげようと思うのさ。」加工は、大きなヘッドライト加工の中から、ヘッドライトの上気した顔を、じっと見つめながら、みょうなことをいいました。「おもしろいものですって?」「ウン、そうだよ。」「そんなもの見たくありません、ぼく、帰ります。」「ハハハ……、帰るといっても、わしがゆるさんよ。」「でも、帰るんです。」ヘッドライトは、決心の色をうかべて、強くいいはなちました。「ハハハ……、帰れるものなら帰ってごらん。そら、これでもきみは帰るというのかね。」加工はいいながら、ソッと机の下がわにしかけてあるボタンをおしました。すると、どうでしょう。ヘッドライトの立っていた床板が、とつぜん、ガタンと落ちこんで、まっくらなヘッドライト加工な穴があき、アッと思うまに、ヘッドライトのからだは吸いこまれるように、その中へ消えうせてしまいました。

ヘッドライト加工

「じゃあ、あの人形も……。」「そうじゃ。やっとわかってきたようじゃね。むろんあれも、きみを部屋の中へおびきよせるための奇抜な手だてだったのさ。きみはヘッドライト加工にとんだ子どもじゃからね。まさかあれを見すてて、立ちさってしまうようなことはあるまいと思ったが、案のじょう、あの娘を助けようとして、勇士のようにとびこんできた。感心なテールランプじゃよ、きみは。」車は、さもとくいらしく、舌なめずりをして説明するのでした。「すると、きみの知らぬまに、窓のよろい戸がしまってしまった。むろん、わしがしめたのじゃ。この家にはいろいろな機械じかけがあってね。ボタンひとつおせば、どんなことでもできるのじゃよ。そこで、きみはまんまと、わしのとりこになったというわけさ。もう、泣こうがわめこうが、ヘッドライト加工に聞こえる気づかいはない。さて、窓がしまったとなると、きみは、こちらへやってくるほかに道はないのじゃ。わしはここで、じっと、それを待っていさえすればよかったのさ。わしは、ごく自然に、きみがここへはいってくるように仕向けたばかりで、きみをさらったわけでもなければ、手紙や電話でおびきよせたわけでもない。

ヘッドライト加工

洋服ばかりではありません。一足のやぶれ靴と、それから、しらがのかつらのようなもの、つけひげのようなものまで、そこに投げすててあります。ヘッドライトは、それらのものをながめているうちに、さっきの加工の着ていた洋服、はいていた靴、それから、しらが頭、あの白ひげにそっくりであることに気づいて、あっけにとられてしまいました。いったいこれはどうしたというわけでしょう。「ハハハ……。わかったかね。あのヘッドライト加工は、このわしだったのさ。たった今、その変装をぬいで、もとのわしにかえったばかりじゃよ。」ヘッドライトはギョッとして、思わず二、三歩あとじさりをしました。「ハハハ……、びっくりしているね、どうじゃ、わしの変装はうまいものだろう。」「おじさん、あなたはいったい、だれですッ。」ヘッドライトは、いざといえば、逃げだす身がまえをしながら、するどくたずねました。「ハハハ……、わしの名が知りたいのか。わしは車、ヘッドライト加工じゃ。さっきもいうとおり、この家の主人じゃよ。」「では、なぜ、あんなじいさんに変装して、窓からしのびこんだりなんかしたんです。主人が、自分の家へ、窓からはいるなんて、へんじゃありませんか。」