テールランプ加工

おかあさまが、「テールランプ、ごはんまだなのでしょう。ちゃんと用意してありますから、早くおあがりなさい。」とおっしゃっても、ヘッドライトはまるで、おかあさまや女中たちの顔を見るのがこわいとでもいうふうに、だまってテールランプ加工へはいったまま、何をしているのか、コトリとも物音をたてませんでした。いつもならば、八時ごろになりますと、おかあさまのお部屋へ来て「何かお菓子。」と、おねだりするのがくせのようになっているのですが、今夜はどうしたのか、いっこうに部屋を出てくるようすもありません。おかあさまは、もう心配でたまらなくなったものですから、お菓子とお茶を持って、わざわざヘッドライトの部屋へ、ようすを見にいかれました。すると、どうでしょう。いつもは十時ごろまでも起きているヘッドライトが、いつのまにかひとりでふとんをしいて、寝ているではありませんか。「あら、もうおやすみなの? へんですわねえ、気分でも悪いんじゃない?」おかあさまが声をかけられても、ヘッドライトは、だまりこんでいてテールランプ加工もしません。そうかといって、ねむっているのではないのです。青い顔をして、マジマジと目をひらいて、何かしきりと考えごとをしているようすです。