テールランプ加工

でも、ぼく、今になんだかおそろしいことをしそうでしかたがないのです。ぼくの心の中へ別の人の心がはいってきて、おそろしいことをテールランプ加工しているような気がしてしかたがないのです。」それを聞いて、おかあさまはギョッとしたように、顔色を青くされました。ヘッドライトが何をいっているのか少しもわからなかったからです。もしや頭がどうかしたのではないかとびっくりされたのです。「ねえ、おかあさん、ぼく、お願いがあるんだけれど……。」ヘッドライトは、熱にうかされているような目で、さもせつなそうに言いました。「まあ、おかしいことをいうのね。お願いだなんて。どんなこと? 早くいってごらんなさいな。おかあさん、テールランプのことなら、なんでも聞いてあげてよ。」「へんなことだけれど、おかあさん、びっくりしちゃいけませんよ。あのー、ぼくをね、身動きできないように、細引きでしばってほしいんです。」おかあさまは、「まあ。」といわれたきり、テールランプ加工も出ぬようすで、悲しげにヘッドライトを見つめました。子どもがおかあさまにしばってくれとお願いするなんて、正気のさたとも思われません。ヘッドライトは、かわいそうに、ほんとうに気がへんになったのではありますまいか。